管理者が知っておくべき Proxmox の必須CLIコマンド10選

Proxmox VE はブラウザのGUIだけでも十分に管理できますが、CLI(コマンドライン)は詳細設定・一括処理・スクリプト化・自動化に強みがあります。本稿では、Proxmox固有の主要10コマンドを、要点と代表例つきで解説します。

目次

  1. qm:VM(QEMU/KVM)の管理
  2. pve-firewall:内蔵ファイアウォールの管理
  3. pvesm:ストレージ管理
  4. pveum:ユーザー/ロール管理
  5. pvesh:Proxmox API シェル
  6. pvecm:クラスタ管理(Corosync)
  7. ha-manager:HA(高可用性)管理
  8. vzdump:バックアップ取得
  9. qmrestore:バックアップからのVM復元
  10. proxmox-backup-client:Proxmox Backup Server 連携

1. qm:VM(QEMU/KVM)の管理

qm は Proxmox の中核CLIで、VMの作成・設定変更・起動停止・スナップショット・マイグレーションなどを行います。

  • 基本書式:qm [options] <command> [arguments]

代表的なサブコマンドと例

# VM一覧(ID/状態を確認)
qm list

# VM新規作成(ID=103、2GB RAM、2 vCPU、vmbr0へVirtIO NIC)

qm create 103 --name "DebianVM" --memory 2048 
\--net0 virtio,bridge=vmbr0 --sockets 1 --cores 2 --ostype l26

# ディスク追加(SCSI 32GB)

qm set 105 --scsi0 local-lvm:32G

# CD-ROM(ISO)をアタッチ

qm set 105 --ide2 local\:iso/debian-10.7.0-amd64-netinst.iso,media=cdrom

# ブート順の設定(まずCD、次にディスク)

qm set 105 --boot order=ide2;scsi0

# 起動/停止/シャットダウン

qm start 103
qm stop 103
qm shutdown 101

# 同一クラスタ内の別ノードへライブ/オフライン移行

qm migrate 103 node2

# スナップショット取得とロールバック

qm snapshot 103 "before\_upgrade"
qm rollback 103 "before\_upgrade"

# クローン作成(フル)

qm clone 103 104 --name "DebianClone" --full

# ディスク容量を拡張(+10GB)

qm resize 103 scsi0 +10G 

2. pve-firewall:内蔵ファイアウォールの管理

ノード/データセンター/VM/CT 単位のルールをCLIから制御します(GUIの「Firewall」と同等の機能)。ゾーンやグループ、マクロを用いた一貫性のあるポリシー管理が可能です。

# 有効化
pve-firewall enable

# 状態確認(ルールや有効化状況)

pve-firewall status

# ログのフォロー

pve-firewall log --follow 

3. pvesm:ストレージ管理

pvesm は Proxmox VE Storage Manager。ディレクトリ、LVM、ZFS、NFS、CIFS/SMB、Ceph、Proxmox Backup Server などのストレージ追加・表示・検査を行います。

# 既存ストレージの状態
pvesm status

# ストレージの内容(ボリューム)一覧

pvesm list local

# NFSストレージを追加(例)

pvesm add nfs nfs-backup --server 192.168.1.10 
\--export /volume1/proxmox --content images,backup 

4. pveum:ユーザー/ロール管理

pveum は Proxmox のユーザー、グループ、ロール(RBAC)をCLIで操作します。組織の権限設計や自動化に有用です。

# ユーザー追加(ローカルレルム)
pveum user add user1@pve --password 'STRONG_PASS'

# 既存ロールの一覧

pveum role list

# パス /vms/100 における "PVEVMAdmin" 権限を付与

pveum aclmod /vms/100 --user user1\@pve --roles PVEVMAdmin 

5. pvesh:Proxmox API シェル

pvesh は Proxmox REST API をローカルから叩くためのシェル。クラスタ情報の取得、VM/CT/ストレージの各種操作の自動化で重宝します。

# 次の空きVMIDを取得
pvesh get /cluster/nextid

# クラスタ内ノード一覧

pvesh get /nodes

# VM 100 の設定を取得

pvesh get /nodes/\/qemu/100/config 

6. pvecm:クラスタ管理(Corosync)

pvecm は Proxmox クラスタの作成・参加・状態確認などを行います。Corosync を用いた信頼性の高いノード間通信を前提とします。

# 新規クラスタ作成(マスターノード側)
pvecm create my-cluster

# 参加(ジョイン)コマンドの生成(トークン)

pvecm addnode \

# クラスタの状態

pvecm status

# ノード一覧

pvecm nodes 

7. ha-manager:HA(高可用性)管理

ha-manager は VM/CT のHA設定(リソース登録、グループ、フェンシング、フェイルオーバー動作)を行います。クラスタと適切な共有ストレージ、フェンス機構が前提です。

# VM 100 をHA管理に登録
ha-manager add vm:100

# HAリソースの一覧

ha-manager status

# リソース削除

ha-manager remove vm:100 

8. vzdump:バックアップ取得

vzdump は VM/CT のバックアップ(スナップショット)を生成します。スケジュールやフック、圧縮・帯域制御など豊富なオプションを備えます。

# VM 100 をスナップショットモードでバックアップし、/mnt/backup へ保存
vzdump 100 --mode snapshot --storage nfs-backup --compress zstd

# 複数VMを対象に(ID列挙)

vzdump 100 101 102 --mode snapshot --storage pbs-repo 

9. qmrestore:バックアップからのVM復元

qmrestorevzdump で取得したバックアップから VM を復元します。新しい VMID で別名復元も可能です。

# バックアップ(.vma.zst 等)から VMID 200 として復元
qmrestore /mnt/backup/vzdump-qemu-100-*.vma.zst 200 --storage local-lvm

10. proxmox-backup-client:Proxmox Backup Server 連携

Proxmox Backup Server(PBS)と連携してデータを送受信するクライアントです。VM/CTのネイティブ統合に加え、ファイルレベルのバックアップにも活用できます。

# リポジトリを指定してバックアップ(例:/data を "daily" に)
proxmox-backup-client backup data.pxar:/data \
  --repository 'pbs@pbs@192.168.1.10:8007:repo1' --backup-id daily

# 復元(リストア)

proxmox-backup-client restore 
\--repository 'pbs\@pbs\@192.168.1.10:8007\:repo1' 
\<BACKUP-ID/TIMESTAMP> data.pxar /restore-target 

活用のヒント

  • 本番環境では各操作の前にスナップショット/バックアップを取得。
  • 繰り返す作業はシェルスクリプト化し、cron/systemd timerで自動化。
  • クラスタ関連(pvecmha-manager)はネットワーク設計とフェンスを最優先で確認。
  • pvesh は API パスの学習にも有効。複雑な一括処理や外部ツール連携に最適。

まとめ

GUIとCLIを使い分けることで、Proxmox の運用はより安全かつ効率的になります。上記10コマンド(qmpve-firewallpvesmpveumpveshpvecmha-managervzdumpqmrestoreproxmox-backup-client)を押さえ、日常運用・トラブル対応・自動化の基盤にしてください。

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