Proxmox VEにおけるクラスタ(HA)構成の仕様とCephとの連携

クラスタの基本仕様

クラスタとは

クラスタとは、複数のサーバーノードをまとめて一つのシステムとして動作させる構成のことです。PVEでは、クラスタリングによって以下のメリットが得られます。

• 高可用性(HA)の実現:ノード障害時に自動的にリソースを他のノードに移行。

• リソースの一元管理:複数ノードのVMやコンテナを単一のGUIまたはCLIで管理。

• 負荷分散:リソースの効率的な利用とパフォーマンス向上。


クォーラムの概念

クラスタの安定動作には、クォーラム(quorum)が重要な役割を果たします。クォーラムとは、クラスタ内のノード間で合意を形成するために必要な最小限のノード数(過半数)のことです。

• 過半数のノードが必要:クラスタが正常に動作するためには、全ノードの過半数が通信可能である必要があります。

• クォーラム未達成時の挙動:過半数のノードが生存確認できない場合、クラスタは動作を停止し、VMやコンテナの起動・移行が行われません。


ノード数の推奨構成

3台以上のノード構成が推奨となっています。偶数台よりも奇数台のノード構成がクォーラムの観点から望ましいです。

• 2ノード構成:一方のノードがダウンするとクォーラムが失われ、クラスタ全体が停止します。

• 3ノード構成:1台のノードがダウンしても過半数が維持され、クラスタが継続して動作します。


クラスタの動作原理

クォーラムの維持

クラスタでは、Corosyncというメッセージングシステムを使用してノード間の通信とクォーラムの管理を行います。

• 心拍(Heartbeat):ノード間で定期的に生存確認の信号を送信。

• フェイルオーバー判断:一定期間応答がない場合、ノード障害と判断。


クラスタの分断(Split-Brain)防止

クォーラム機能は、クラスタの分断(Split-Brain)を防止するために重要です。

• Split-Brainとは:ネットワーク障害などでクラスタが二つ以上のグループに分断され、それぞれが独立して動作してしまう状態。

• 対策:クォーラム未達成のグループは動作を停止し、データの不整合や破損を防止。


ノード障害時の挙動

• 過半数維持時:クラスタは正常動作を継続し、HA設定されたVMやコンテナは他のノードに自動的に移行。

• 過半数喪失時:クラスタは動作を停止し、新たなVMの起動や移行は行われません。


Cephとの連携による高可用性ストレージ

Cephとは

Cephは、オープンソースの分散ストレージシステムであり、PVEと連携して高可用性のストレージ環境を提供します。


特徴

• 分散アーキテクチャ:データを複数のOSD(Object Storage Daemon)に分散保存。

• 自己修復機能:ノードやディスク障害時に自動的にデータを再構築。

• スケーラビリティ:ノードやディスクの追加で容量や性能を拡張。


Cephクラスタの仕様

• MON(Monitor)ノード:クラスタの状態管理とクォーラムの維持を担当。

• 奇数台のMONノードが推奨:PVEクラスタ同様、過半数の維持が必要。

• OSDノード:実際のデータを保存。

• データのレプリケーション:デフォルトで3つのOSDにデータを複製。


PVEクラスタとCephの統合

• 共有ストレージとしてのCeph:VMやコンテナのディスクイメージをCeph上に配置。

• HAとCephの組み合わせ:ノード障害時にVMを他ノードに移行しても、共有ストレージ上のディスクイメージにアクセス可能。


クラスタ構成における推奨事項

ノード数と構成

• 最小3ノード構成:クォーラム維持と高可用性を両立するための最小構成。

• 拡張性:必要に応じてノードを追加可能。拡張時も奇数台を維持することが望ましい。


ネットワーク設計

• 冗長なネットワーク:専用のクラスタネットワークとストレージネットワークを設計。

• 帯域幅の確保:特にCephを利用する場合、高速なネットワーク(10GbE以上)が推奨。


フェンシング(Fencing)の実装

• フェンシングとは:障害ノードを強制的に停止させ、データの整合性を保つ機能。

• 方法:IPMIやiLOなどの電源管理デバイスを利用。

• 重要性:クラスタの安全な動作に不可欠。


クラスタ運用時の注意点

クォーラム喪失時の対処

• ノードの迅速な復旧:過半数を失った場合、速やかにノードを復旧させる。

• バックアップの確保:定期的なデータバックアップにより、万一のデータ損失に備える。


バージョンの一貫性

• ソフトウェアの統一:全ノードで同じバージョンのPVEおよびCephを使用。

• アップデートの計画的実施:ローリングアップグレードを避け、メンテナンスウィンドウを設けて全ノードを更新。


モニタリングとログ管理

• 監視ツールの活用:クラスタの状態やパフォーマンスを常時監視。

• ログの定期的な確認:異常検知や障害予防のために重要。


まとめ

PVEのクラスタ(HA)構成では、クラスタの仕様や動作原理を正しく理解することが高可用性の実現に不可欠です。特に、過半数のノードが生存していることがクラスタの正常動作に必要であり、3台以上のノード構成が推奨される理由もここにあります。また、Cephとの連携により、ストレージ面でも高可用性とスケーラビリティを両立できます。

適切なクラスタ設計と運用により、システム障害時にもサービスの継続運用が可能となり、ビジネスの信頼性を高めることができます。


参考情報

• Proxmox VE公式ドキュメント:https://pve.proxmox.com/pve-docs/

• Proxmoxクラスタの詳細:https://pve.proxmox.com/wiki/Cluster_Manager

• CephとPVEの統合:https://pve.proxmox.com/wiki/Storage:_Ceph

• 高可用性クラスタに関する情報:https://pve.proxmox.com/wiki/High_Availability_Cluster

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